薬剤師のプログラミング学習日記

プログラミングやコンピュータに関する記事を書いていきます

バンコマイシンTDM-ベイズ推定プログラムを実装するー

前回記事では入力された患者情報から母集団PKパラメータを用いてバンコマイシン(VCM)の血中濃度推移をシミュレーションするプログラムを作りました。今回はベイジアン法により対象患者のPKパラメータを推定し、算出されたAUCを基にして推奨投与量を求める…

Pythonでバンコマイシンの血中濃度プロファイルをシミュレーションする

日本化学療法学会がホームページで公開しているバンコマイシンTDMソフトウェアで PAT(Practical AUC-guided TDM for vancomycin)というWebアプリケーションがあります。名前が示すように、AUCガイドによる投与設計を実践するためのTDMソフトです。ソフトの…

薬の蓄積率について-投与間隔と半減期からわかること-

ネットで蓄積率を検索すると『投与間隔/消失半減期が3以下なら定常状態のある薬、4以上なら定常状態のない薬』などの記事が見つかります。今回はこの3や4という数字の意味について見ていきたいと思います。 蓄積率とは 蓄積率の式をグラフでみる 具体的な例…

トラフ値からkeを推定する

今回の記事は参考文献『4ステップ 臨床力UPエクササイズ4 TDM領域』の『Step3 薬物治療の個別化(薬物投与設計)の実践』の項目を基に書いています。 この項目の概要としては、喘息症状が悪化した患者のスクリーニングを通して薬物クリアランスの変動を考…

経口繰り返し投与のグラフを描く

n回繰り返し投与後の血中濃度 経口投与の定常状態における最高・最低血中濃度とAUC Sympyによる微分と定積分 経口繰り返し投与のクラス 血中濃度推移の描画 参考 n回繰り返し投与後の血中濃度 投与間隔(タウ)でn回繰り返し投与後のt時間経過時の血中濃…

経口投与のフリップ・フロップをグラフで見る

Flip-Flop(フリップ・フロップ) 各条件で用いる数式 ke<kaの場合 ke>kaの場合 ke=kaの場合 TmaxとCmax グラフと文字の更新処理 フリップフロップを確認する 参考 Flip-Flop(フリップ・フロップ) 前回記事の最後に、消失相の傾きはkaとkeの大小関係によってどちらが反映さ</kaの場合>…

血中濃度データに経口投与モデルを当てはめる

以前1-コンパートメントと2-コンパートメントの静注モデルでもやりましたが、今回は前回記事の1次速度の吸収過程のある1-コンパートメントモデルでやってみようと思います。 血中濃度データの片対数プロット プロットから消失速度定数(ke)と吸収速度定数(ka…

経口投与1-コンパートメントモデルのグラフを描く

1次速度の吸収過程のある1-コンパートメントモデル 吸収過程と消失過程 参考 1次速度の吸収過程のある1-コンパートメントモデル 経口投与時の血中濃度推移はこのモデルで表すことができます。※ka: 吸収速度定数, ke: 消失速度定数 この連立微分方程式を解…

テイコプラニンの負荷投与のグラフを描く(2-コンパートメントモデル)

半減期の長い薬物の場合は定常状態への到達が遅れます。このような薬物の場合、開始時期に投与量や回数を増やすことで目標とする血中濃度への到達を早める投与設計を行うことがあります。 今回はこれまで使ってきた2-コンパートメント点滴静注モデルのプログ…

Pythonによるシミュレーション高速化のためのコードの改善

はじめに 定常状態の血中濃度を得る部分を最小限に 演算に関わる部分はNumpy配列のみを使う コード改善後の処理時間 はじめに 前回まで書いていたモンテカルロシミュレーションのプログラムを改善して、どれだけ処理時間が短縮できるかを試みよう、という記…

抗菌薬でモンテカルロシミュレーション③ーPK/PDブレイクポイントを求めるー

一定の基準以上の有効率が得られるMICの最大値をPK/PDブレイクポイントとして求めます。 内容的にはこちらの続きとなります。 www.yakupro.info 目標達成確率の算出 目標達成確率-MICのグラフを作成する PK/PDブレイクポイントを確認する プログラムの処理時…

抗菌薬でモンテカルロシミュレーション②ー %T>MICの分布を確認するー

前回は乱数でPKパラメータを生成するところまでやりました。今回は、これらのパラメータをもとに用法・用量を設定して血中濃度推移を計算していきます。内容的には前回の続きとなります。 www.yakupro.info %T>MIC値の確認 用法・用量を設定し血中濃度推移を…

抗菌薬でモンテカルロシミュレーション①-乱数を用いたPKパラメータの生成-

はじめに モンテカルロシミュレーションとは 目的と手順の確認 乱数を用いてPKパラメータを発生させる 参考 はじめに 前回、前々回とPK/PDパラメータを求めるコードを自前のクラスに実装したので、今度はこれらのパラメータを使うモンテカルロシミュレーショ…

PK/PDパラメータのCmax/MIC, AUC/MICを求める

今回も引き続きPK/PDパラメータについてです。前回は www.yakupro.infoでTime above MICを求めるコードを書きましたが、今回はCmax/MICとAUC/MICを求めるメソッドを実装しようと思います。コードはあまり複雑な部分はなく、簡単に書くことができました。 Cma…

PK/PDパラメータのTime above MICを求める

抗菌薬のPK/PDパラメータ Time above MICとは %T>MICを求める 参考 抗菌薬のPK/PDパラメータ PK/PDとは薬物動態学(用法・用量と抗菌薬の濃度推移の関係)と薬力学(抗菌薬の濃度と有効性・副作用の関係)を組み合わせることにより、抗菌薬の有効性や安全性…

2-コンパートメント点滴静注モデル繰り返し投与ー再帰関数による実装ー

前回はある程度時間が経ってからの血中濃度を近似的に計算する方法を使いプログラムを書きましたが、誤差が大きく使えそうもありませんでした。今回は別の方法で繰り返し投与の実装を考えます。 血中濃度の足し合わせによる方法 再帰関数 再帰関数で実装する…

2-コンパートメント点滴静注モデル繰り返し投与ー近似によるグラフ描画ー

今回は2-コンパートメント点滴静注モデルの繰り返し投与のプログラムを書いてみたいと思います。 2-コンパートメントモデルの繰り返し投与 投与終了何時間後から近似するか 近似を使って血中濃度を求めるクラスを書く グラフの形を確認してみる 2-コンパー…

バンコマイシンの血中濃度データに2-コンパートメントモデルを当てはめる

点滴静注したバンコマイシン*1の血中濃度データが得られたとして、これを2-コンパートメントモデルに当てはめ、薬物動態パラメータを求めてみます。 2-コンパートメント点滴静注モデル 残差法で回帰直線のパラメータを求める 非線形最小二乗法によるフィッテ…

1-コンパートメント点滴静注ー不均等の間隔・投与量に対応したプログラムを作るー

引き続き1-コンパートメント点滴静注モデルです。今回は不均等の時間間隔投与(例えば、初回12時間、2回目12時間、3回目以降24時間や、投与回ごとに投与量が異なる場合の血中濃度推移を描画できるプログラムを作りたいと思います。 一般化された式を使わずに…

薬物動態パラメータを変化させた場合の血中濃度推移

点滴時間、半減期、分布容積の薬物動態パラメータを変化させたときの血中濃度推移の動きをプログラムを書いて確かめてみます。モデルは1-コンパートメント点滴静注モデルです。 点滴時間の変化による影響 半減期と分布容積の変化による影響 半減期の変化によ…

1-コンパートメント点滴静注繰り返し投与ー最高・最低血中濃度とAUCー

1-コンパートメント点滴静注繰り返し投与の定常状態における最高・最低血中濃度とAUCを求めてみます。 定常状態における平均血中濃度と最高・最低血中濃度 AUC(血中濃度-時間曲線下面積)とは クラスを継承する 数値積分でAUCを求める 参考 定常状態におけ…

1-コンパートメント点滴静注繰り返し投与のグラフ描画

前回記事「1-コンパートメント点滴静注モデルの血中濃度推移」の点滴静注モデルにおいて、反復投与したときの血中濃度推移のグラフを描きます。 反復投与時の血中濃度 血中濃度推移を求めるクラスを作る クラスとは 何をするクラスか 動かし方 インスタンス…

1-コンパートメント点滴静注モデルの血中濃度推移

今回は0次速度の吸収過程のある1-コンパートメントモデルのグラフを描いてみます。 点滴静注時の血中濃度推移 定常状態における血中濃度 定常状態に到達するまでの時間 点滴中止後の血中濃度推移 参考 点滴静注時の血中濃度推移 「0次速度の吸収過程」という…

血中濃度データに1-コンパートメント急速静注モデルを当てはめる

急速静注した薬物の5点の血中濃度推移のデータが得られたとして*1、これを1-コンパートメント急速静モデルに当てはめ、消失速度定数、半減期、分布容積、クリアランスの薬物動態パラメータを求めてみようと思います。 1-コンパートメント急速静注モデル 回帰…

0次反応と1次反応のグラフをPythonで描く

薬物動態でよく出てくる0次、1次の速度過程のグラフを描いてみます。 0次反応と1次反応の速度式 各反応の半減期 速度式を関数として定義する 各反応における消失のパターン 参考 0次反応と1次反応の速度式 0次反応と1次反応における薬物量変化の収支式は以下…